新型コロナウイルス感染症の影響に対して活用できる制度として、雇用調整助成金の申請件数が日々増加しております。 すでに申請をされた方も、検討中の方もおられるかと思いますが、雇用調整助成金で用いられる用語や、定義について正しく理解しておかなければ、思わぬところで思い違いが発生してしまう可能性がございます。
そこで今回は、休業等に関して、特に重要な用語・定義と取扱いに焦点を絞って、箇条書きに近い形で解説をさせていただきます。
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Ⅰ.前提としての用語・定義
・雇用調整助成金
「雇用保険に加入している従業員」 に対して、休業手当として支払った費用を補填する助成金です。 正社員や、週20時間以上働くパートで、雇用保険に加入されている人等が休業した場合、こちらで申請することになります。
・緊急雇用安定助成金
「雇用保険に加入していない従業員」 に対して、休業手当として支払った費用を補填する助成金です。 雇用保険に加入していないパート、学生アルバイト等が休業した場合、こちらで申請します。 ただし、役員や家族従業員は基本的に助成金の対象外となりますので、ご注意ください。
・小規模事業主
事業所全体の従業員数が20人以下の事業主のことです。 通常の様式より作成が簡単になった様式を使用することができます。
・緊急対応期間
この期間中に行われた休業に関して、特例が適用されるものです。 現在(令和2年7月末日)、設定されている期間は、 令和2年4月1日~令和2年9月30日となっています。
・労使協定書
休業のルールについて経営陣と従業員が決定した協定書です。 休業等を実施するにあたっては、休業の期間や対象者、休業手当の支払い額といった様々なイレギュラーな事項を考え、経営陣と従業員が話し合ったうえで決定することが必要です。話し合った結果をまとめ、労使双方が合意していることを示すため、協定という形に整備します。
助成金上も、従業員都合の休業なのか、会社都合の休業(計画された休業)なのかを判断するため、労使協定書の提出が必要になります。
Ⅱ.申請するうえで重要な用語・定義
・休業
事業活動の縮小(後述の”生産指標要件”参照)により、従業員に割り振る業務がない場合など、会社の都合で全日または就業時間の一部を休ませることです。休業手当の支払いが必要になります。
・短時間休業
就業時間の一部を休ませることを短時間休業といいます。 通常の休業と同じく、休業手当の支払いが必要となります。 ただし、個々人の早退等を休業と混同しないよう、助成金の対象とするには何らかのまとまりをもって、一斉に行う必要があります。
例えば、お店の営業時間を短縮して全員が1時間ずつ休業となる、業務量が特に少ない部門だけを半日休業させる、といった場合は助成金の対象とすることができます。
・教育訓練
就業時間の全日、または半日について、通常の業務に就かせることなく、従業員の能力開発のための訓練を受けさせることです。 休業とは違い、休業手当の支払い義務はありませんが、普段働いているときと変わらずに給与を支払わなければなりません。
休業の時と同様、助成金で教育訓練を受けさせた日の給与支払いを補填することができますが、訓練カリキュラムや詳細なレポートの提出が必要になります。
・判定基礎期間
雇用調整助成金での期間の区切りのことで、原則、給与の締日の翌日~次の給与締日と定められています。 例えば、末締めの会社が4月1日から休業を開始する場合は、4月1日~4月30日までが判定基礎期間となります。
申請にあたっては、この期間ごとに書類を作成し、申請します。
・雇用維持要件
事業場の雇用状態を確認する要件です。 助成率・支給上限額の引き上げ特例が実施されておりますが、雇用調整助成金の趣旨が雇用を維持することであるため、労働者の数が大幅に減少傾向にある、もしくは解雇等(後述)を行っている場合、特例の適用外となり、助成額が変動(低減)することになります。
令和2年1月24日を基準に、各判定基礎期間の末日時点のデータをもとに、労働者数・解雇等の有無を確認します。
・解雇等
例えば、 解雇、退職勧奨、雇止め、中途契約解除といったものです。
判断が難しい場合はハローワーク等にお問い合わせされることをお勧めします。
・生産指標要件(事業活動の縮小)
コロナウイルスの影響で売上等が低下(=業務量が減少)しているか、という、助成金が活用できるかの確認要件です。 具体的には、休業を開始した月を基準に、前年同月の売上高を比較して、5%以上の低下があれば、要件を満たすことになります。
休業を開始した月の前月(もしくは前々月)を基準にする等、柔軟な対応ができる場合があります。
・休業規模要件
1つの判定基礎期間において、休業を延べ何日しなければならないか、という要件です。要件未達の場合、その期間は助成金の対象となりません。 緊急対応期間中、休業規模要件の計算は、対象労働者(後述)全員の延べ所定労働日数÷40で計算することができます。
例えば、対象労働者数が10名で、土日休みの会社の4月の休業規模要件は、(10×22)÷40=5.5となるので、6日間の休業が必要です。
・対象労働者
雇用調整助成金の場合は雇用保険被保険者、緊急雇用安定助成金の場合は休業実施者が対象労働者となります。
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