新型コロナウイルス感染の影響により、事業の休止や縮小を余儀なくされ、従業員の方の休業を検討している。または、小学校等が臨時休業になり、従業員の方から家族の面倒を見るために休暇が欲しいという申し出があった。
…そのような状況の事業主の方は少なくないのではないかと思います。
今回は、コロナウイルスに関する様々な人事・労務関係の影響について、ケーススタディの形でいくつか紹介させていただきますので、労務対応や考え方の整理にお役立ていただければと思います。
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Ⅰ.従業員がコロナウイルスに感染した為、休業させた。
コロナウイルスは指定感染症として定められた為、感染した従業員を休業させても、一般的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」には該当しませんので、休業手当※1の支払いは不要です。感染した従業員がけんぽ協会等の健康保険に加入している場合、傷病手当金の対象となります(国民健康保険被保険者は不可)。
【参考】
※1)休業手当:使用者の責に帰すべき事由により、従業員を休業させた場合、使用者は従業員に対し、休業期間中の休業手当を支払う義務があります。この休業手当の日額は平均賃金※2の100分の60以上となります。
※2)平均賃金:原則、過去3か月の総支給額を、過去3か月の総暦日数で除して得た額
Ⅱ.コロナウイルスに感染した恐れのある従業員を休業させた。
使用者の自主的判断により休業させる場合は、一般的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当しますので、休業手当の支払い義務が発生します。
Ⅲ.コロナウイルスに感染した従業員がいた為、その従業員が所属する店舗・部署の事業を停止し、同じ職場の従業員を休業させた。
店舗・部署等の事業を休止するに至った原因は、感染した従業員と同じ職場の従業員(濃厚接触者)が、コロナウイルスに感染している恐れがあることによるものと考えられます。
最終的に、安全に配慮した結果、使用者の判断によって、従業員を休ませた場合、Ⅱと同様に休業手当の支払い義務が発生する可能性が高いと考えられます。
Ⅳ.コロナウイルスの影響によって、事業の休止、業務量の減少などを余儀なくされ、やむを得ず休業させた。
基本的には、休業手当の支払い義務が発生する可能性が高いと考えられます。
通常、休業手当の支払い義務は「使用者の責に帰すべき事由による休業」の場合に発生しますが、不可抗力によるものは含まれないと解されております。今回のコロナウイルスに関しては、不可抗力によりものではないかと考えたいところではありますが、コロナウイルスの影響を受けた事実だけをもって支払い義務がなくなるわけではなく、使用者として行うべき最善の努力を尽くしてもなお就業不能であったか等を勘案して判断されます。
Ⅴ.小・中学校、高等学校、特別支援学校等の臨時休校に伴い、子の世話のために休暇を申し出てきた従業員がいる。
可能な限り従業員の申し出を受け入れ休暇を与えてあげられるよう努めてください。その場合の勤怠の扱いについては、欠勤(無給)もしくは年次有給休暇の取得で対応することになります。
Ⅵ.(その他の労務対応について)
1年単位の変形労働時間制を導入されている場合、本来であれば労使協定の対象期間途中で協定内容を変更することはできませんが、今回のコロナウイルスの影響を考えると、現状の労使協定の内容を実施することが不適当と認められる場合は、特例的に再度労使で話し合った上で、労使協定の解約または変更することが可能とされております
今回、いくつか事例を紹介させていただきましたが、休業手当の支払い義務等については、個別の事情等を勘案し判断されるものになりますので、紹介させていただいた内容と異なる判断がされる場合がございます。類似するケースが発生し、判断に迷われた場合は、最寄りの労働基準監督署や社会保険労務士にお問い合わせいただければと思います。
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